イギリス自閉症協会は9月7日、ロックダウンを行ったイギリスの新型コロナウイルス感染症の影響についての調査結果（Published on 07 September 2020）を公表しました。

イギリスでは3月23日にロックダウン（人々の外出や行動を制限する措置）が開始されました。

以下は、レポートの抜粋です。抜粋と翻訳はNPO Mind Recoveryが行いました。

取り残された：英国における自閉症の人たちとその家族へのコロナウイルスの影響（Left stranded: The impact of coronavirus on autistic people and their families in the UK ）

英国には、70万人の自閉症の大人と子供、かれらの300万人の家族と介護者がいる。

メンタルヘルス、ソーシャルケア、教育サービスが、（ロックダウンによって）急速に撤退し、多くの自閉症の子供、大人、およびその家族は、必要な精神保健福祉が受けられなくなった。

本レポートの調査方法

2020年6月から7月にかけて、英国全土の自閉症者とその家族を対象に、コロナウイルスとロックダウンの経験についてオンライン調査を実施した。4,232件の回答を得た（自閉症者から1,810件、家族から2,422件）。

調査結果

一般の人々と比較して、自閉症の人々は6月と7月の間、慢性的に孤独である可能性が7倍以上だった。生活満足度が低い可能性が6倍だった。

10人中9人の自閉症者は、ロックダウン中、精神的な不安を抱えていた。

家族の5人に1人は、介護のために仕事を減らさなければならなかった。

これらの問題は、自閉症の子供や大人のための教育、メンタルヘルス、ソーシャルケアサービスが不十分であったために生じた。

コロナウイルスが自閉症の人々の精神的健康にさらなるプレッシャーをかけ、彼らを脆弱にしている。

オンラインや電話で利用できるサポートがあり、多くの人にとって重要な役割を果たしてきたが、一部の自閉症の人にとっては、簡単にアクセスできず、うまくいかないことがある。

自閉症に適した、コミュニティベースのメンタルヘルスサービス（実証に基づくカウンセリングや心理療法など）へのアクセスがなければ、自閉症の人々のメンタルヘルスの問題は急速に悪化する可能性がある。

自閉症の人の多くは、感覚過多のためにフェイスカバーの着用に苦労している。70％がこのことを心配していると答えた。マスクを着用できない障害者は、着用を免除されているが、店のスタッフや客、一般の人々はこのことを常に認識しているわけではなく、自閉症の人々は、彼らから（着用するよう）注意されたり、退場を求められたりすることがある。

また、ある自閉症の人は、いきなり「非接触型体温計」を向けられたときの恐怖を語っている：銃のように構えられた赤外線体温計が、何の前触れもなく私の頭に向けられた時、私は軽いパニック発作を起こしました。あまりにも怖かった。通常の生活に戻るまで、我慢することはできません。

イギリス自閉症協会はレポートの中で、自閉症の一般理解の啓蒙活動と、政府にソーシャルケアサービスに取り組むよう、首相に向けて行動を起こすこと、を宣言しています。

発達障害情報・支援センターは９月４日、新型コロナウイルス感染症の影響についてのアンケート結果（速報）を公表しました。

新型コロナウイルス感染症の影響についてのアンケート

http://www.rehab.go.jp/ddis/新型コロナウィルス感染症（COVID-19-の関連情報/#_11922

アンケートの回答者は、国内の発達障害の当事者352名と保護者・家族500名です。

回答者の障害は、当事者と保護者・家族 ともに、ASD（自閉スペクトラム症）が最も多かったです。

当事者と保護者・家族 ともに、これまでの生活が大きく変化し、心身の不調を感じている人が多くいることがわかりました。

当事者の回答では、仕事やお金の不安を抱える人も一定数いることがわかりました。

また、以下の要望がありました。

• 生活資金の支援や支援のための情報がほしい。

• 「控える」、「慎重」になど、曖昧な表現が多い。もっと分かりやすく言ってほしい。

触覚（肌）などの過敏によって、マスクをすることに困り感をもつ人が多くいることが分かりました

保護者・家族の回答では、新しい生活習慣への戸惑いや、精神的な負担を感じている人が多くいることがわかりました。

また、以下の要望がありました。

• 発達障害の人が感染対策を身につけるための方法を教えてほしい。

• 本人・家族がコロナに感染した場合、治療や入院、本人の預け先、付き添いなどはどうなるのか…見通しが持てなくて不安、情報がほしい。